健康な歯が守る!転倒予防で笑顔の毎日を

皆さん、こんにちは。中央区にある歯科医院、月島キャピタルゲート歯科です。今日は少し意外かもしれませんが、お口の健康と転倒予防の大切な関係についてお話ししたいと思います。

目次

歯の数が転倒リスクに影響する驚きの事実

「歯と転倒が関係あるの?」と思われるかもしれません。しかし、実はとても深い関係があるのです。

厚生労働省が実施した調査によれば、歯が19本以下で入れ歯を使用していない高齢者は、歯が20本以上残っている方に比べて転倒リスクが2.5倍高いことが報告されています。これは驚くべき数字ですよね。一方、歯が19本以下でも入れ歯を使用している場合は、転倒リスクが1.36倍に抑えられることも分かっています。

つまり、歯の本数が20本以上ある方は19本以下の方に比べて、転びにくいのです。そして入れ歯によって歯を補っている方も、入れ歯を使っていない方よりも転びにくくなるというデータがあります。

残念ながら歯の数が少なくなってしまった方も、歯の一部またはすべてを失った場合に人工的な歯(被せ物・詰め物、入れ歯、ブリッジ、インプラントなど)で修復する「補綴(ほてつ)」治療によって歯を補うことが「転倒防止」の観点からも重要であることが分かります。入れ歯は見た目や食事のためだけではなく、実は全身の健康を支える大切な役割も果たしているのです。

なぜ歯の数が転倒と関係するのでしょうか?

不思議に思われるかもしれませんが、科学的な理由があります。主に二つの要因が考えられています。

噛む力の低下が全身に影響します

歯を失うことにより「噛む力」が低下すると、どうしても食事内容が変わってきます。硬いものや繊維質の多い野菜などを避け、柔らかいものばかり食べるようになると、必要な栄養素が不足しがちになります。特にタンパク質やカルシウム、ビタミンなどは、骨や筋肉の維持に欠かせない栄養素です。

栄養のバランスが崩れると、自然と筋力やバランス能力が低下してしまう可能性があるのです。これが転倒リスクの増加につながると考えられています。例えば、足の筋力が弱くなると、ちょっとした段差でもつまずきやすくなりますよね。

お口の感覚が全身のバランスに影響します

もう一つ大切なのは、お口の感覚と全身のバランスの関係です。歯の健康は全身の健康と密接に関連しており、歯の喪失が少ない方ほど運動機能や視覚・聴覚機能が優れていることが研究で示されています。

お口の中には多くの神経が通っており、歯で物を噛むという動作は脳に様々な刺激を送っています。この刺激が減ることで、脳の働きも少しずつ変化し、バランス感覚や反射神経にも影響が出ることがあるのです

入れ歯をしっかりと使うことで、こうした刺激が適切に脳に伝わり、体全体の機能を維持するのに役立っています。まさに「噛む」という行為は、全身の健康に大きく貢献しているのです。

転倒から寝たきりへ – 防ぎたい連鎖

特に高齢者の場合、転倒がきっかけで骨折し、そこからうまく回復できずに「寝たきり」になってしまうことが大きな問題となっています。一度寝たきりになると、さらに筋力が低下し、再び歩けるようになるまでに多くの時間と労力が必要になります。

寝たきりの主な原因を知っておきましょう

寝たきりになる原因は実に様々ですが、主な要因は以下のような疾患や状態です。

  • 脳卒中(脳血管疾患)
    厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、寝たきりの原因として最も多いのが脳卒中で、全体の約33.8%を占めています。脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症し、体の一部が麻痺したり、運動機能が低下したりして、寝たきり状態に至ることが多いです。
  • 認知症
    認知症は寝たきりの原因として2番目に多く、約20%を占めています。認知症により判断力や運動能力が低下することで、日常生活の動作が難しくなり、寝たきりにつながるケースがあります。また、転倒や事故のリスクを避けるために、家族が寝たきり状態を選ぶ場合もあります。
  • 高齢による衰弱(老衰)
    加齢に伴う自然な筋力低下や関節の柔軟性の低下により、日常生活の動作が次第に困難になり、寝たきり状態に至ることがあります。この原因は全体の約15%を占めています。
  • 骨折・転倒
    骨折や転倒は寝たきりの原因の約7.5%を占めています。特に高齢者は骨粗しょう症により骨が弱くなっているため骨折しやすく、これが寝たきりにつながることが多いのです。
  • 関節疾患
    膝や股関節などの痛みや変形により、歩行が困難になり寝たきりにつながるケースで、約2.3%を占めています。

このように、寝たきりになってしまう原因の約8%が転倒・骨折です。決して少ない数字ではありません。そして、この転倒・骨折のリスクを減らすために、歯の健康維持が役立つのです。

実践!転倒予防のための取り組み

当法人の本院がある千代田区では、高齢者を対象に、寝たきり防止教室を開催しています。歯科の講演とは別に、定期的に転倒防止の運動教室も行われていますが、そこでもよくお伝えしていることがあります。

それは、転倒しそうになった時に、とっさに足が一歩前に出るかどうかが、大きなケガを回避できるかどうかの分かれ道になるという点です。反射的に足を出せるかどうかは、日頃の訓練で改善できます。

実際の教室では、前に体を傾けながら、ポンと足を一歩踏み出すトレーニングを行っています。このとき、「歯を噛み締める」ことで全身に力が入り、身体を安定させることができます。ここでも歯の役割は重要なのです。

噛み締められる歯があるということは、体に力を入れるときに大きな支えになります。入れ歯を使っている方も、しっかり合った入れ歯であれば同様の効果が期待できますよ。

歯の健康が支える豊かな生活

これまでお話ししてきたように、歯の健康は単にものをよく噛めるというだけでなく、全身の健康や日常生活の安全にも大きく関わっています。

しかし、年齢を重ねるにつれて、どうしても歯のトラブルは増えていきます。大切なのは、問題が小さいうちに対処すること。そして、もし歯を失ってしまった場合には、適切な方法で補うことです。

現代の入れ歯は快適です

「入れ歯は面倒」「痛い」「合わない」といったイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、現在の入れ歯技術は昔と比べて格段に進歩しています。

自費の入れ歯も進化しており、より自然な見た目で、より快適に使える入れ歯が作れるようになりました。また、近年は一層違和感が少なく快適な、「インプラントオーバーデンチャー」も人気です。インプラントオーバーデンチャーは、インプラントという人工の歯根を顎の骨に埋め込み、それを支えにして入れ歯を取り付ける治療法で、インプラントと従来の入れ歯の良いところを組み合わせている、ハイブリッド入れ歯です。数本のインプラントで入れ歯をしっかり固定するため、外れにくく、安定感があり、会話や食事も快適に行えます。

違和感が少なく、しっかり噛める入れ歯は、食事の楽しみを取り戻すだけでなく、先ほどご説明したように転倒予防にも役立ちます

もし、今使っている入れ歯に不満がある場合は、ぜひ私たち歯科医院にご相談ください。一人ひとりのお口の状態や生活スタイルに合わせた、最適な入れ歯をご提案します。

定期検診で早期発見・早期対応を

歯の問題は、初期段階では自覚症状がないことが多いのが特徴です。痛みや違和感が出てきた時には、すでに進行していることも少なくありません。

定期的な検診によって、小さな問題を早期に発見し、対処することが、歯の健康を維持する最も効果的な方法です。3〜6ヶ月年に一度の検診をお勧めしています。

特に、「最近噛みにくくなった」「入れ歯がゆるい」「口の中が乾きやすい」といった症状がある場合は、早めにご相談ください。小さな調整で改善することも多いのです。

毎日の口腔ケアで健康寿命を延ばしましょう

口腔ケアは、虫歯や歯周病の予防だけでなく、全身の健康維持にも貢献します。特に高齢の方は、お口の中の細菌が肺に入り込み、肺炎などの感染症を引き起こすリスクも高まります。

毎日の丁寧な歯磨きと、定期的な歯科検診によって、お口の中を清潔に保つことが大切です。入れ歯を使用されている方も、入れ歯の清掃は毎日欠かさず行いましょう。

家庭でできる口腔ケアのポイント6つ

  1. 糖分を多く含む食べ物・飲み物の摂取回数を減らす:
    最も重要なのは、虫歯の原因となる糖分の摂取頻度を減らすことです。甘い食べ物や飲み物を摂取するたびに、お口の中の酸性度が高まり、歯のエナメル質が溶け始めます。甘いものを摂取する場合は、食事の時間にまとめて摂ることをおすすめします。間食として甘いものを頻繁に口にするよりも、食後のデザートとして食べる方が歯への負担が少なくなります。
  2. 丁寧な歯磨き
    一本一本の歯をしっかりと磨きましょう。特に歯と歯茎の境目は細菌がたまりやすいので念入りに。時間をかけて、優しく丁寧に磨くことがポイントです。
  3. 適切な歯ブラシの選択
    毛先が開いた歯ブラシは効果が落ちています。1ヶ月に一度の交換を目安にしましょう。また、ご自分の歯の状態に合った歯ブラシ選びも大切です。柔らかすぎず、硬すぎない適度な硬さの歯ブラシがおすすめです。
  4. 入れ歯のケア
    入れ歯も毎日洗浄し、就寝時は外して専用の洗浄剤につけておくことをおすすめします。入れ歯の表面に付着した汚れや細菌を落とすことで、不快な臭いや口内炎などのトラブルを防ぎます。
  5. 舌の清掃
    舌の表面にも細菌は付着します。専用の舌クリーナーや柔らかい歯ブラシで優しく舌を磨くことも口臭予防に効果的です。強くこすりすぎないように注意しましょう。
  6. 十分な水分摂取
    口の中が乾燥すると細菌が増殖しやすくなります。水分をこまめに摂り、お口の中を潤した状態に保ちましょう。特に高齢の方は喉の渇きを感じにくくなるので、意識して水分を取ることが大切です。

毎日の少しの時間でできるこれらのケアが、お口の健康だけでなく、全身の健康を守ることにつながります。わからないことがあれば、歯科衛生士にお気軽にご相談ください。適切なケア方法をお伝えいたします。

最後に

歯の健康と転倒予防には深い関係があることをお分かりいただけたでしょうか。

20本以上の歯を維持することが理想ですが、失った歯は適切な補綴で補うことで、転倒リスクを軽減できます。これは科学的なデータで裏付けられた事実です。定期的な歯科検診と日々の口腔ケアを通じて、お口の健康を守り、元気で活動的な毎日を送りましょう。

私たちは、患者さんのお口の健康を通じて、全身の健康と笑顔あふれる毎日をサポートしていきたいと考えています。皆さまの笑顔と健康を守るために、常に最善の医療をご提供いたしますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

いつまでも美味しく食べて、楽しく会話して、そして安全に歩き続けるために。健康なお口づくりを、一緒に始めましょう。

【監修】

歯科医師 濱 克弥

・医療法人社団峰瑛会 理事長
・インプラント治療担当
・インビザライン診断担当
・マレーシア・サクラデンタルクリニック・医療アドバイザー

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